今回は、めったに足を運ぶことのない移民歴史博物館。観光客もほとんど見かけないこの博物館は、今の「ケ・ブランリー博物館」が出来る前のアフリカ・オセアニアに関する博物館であった。ヴァンセンヌの森のすぐ横にあるこの博物館は、パリの喧騒を離れて緑に囲まれた場所にありとってもゆったりした時間が流れている感じ。個人的にはこの場所にあった時のアフリカ・オセアニア博物館の方が好きでした。建物そのものもすでに美術品のような素晴らしさで、中に入ると素晴らしいモザイクに飾られたエントランス。建物の素晴らしさとその広さをかなり持て余した移民歴史博物館で、久々に面白そうな展覧会を開いていると聞いたので足を伸ばしてみました。
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立派な門構え |
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すぐ目の前はヴァンセンヌの森 |
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エントレンスは吹き抜けて広々 |
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床のモザイクが素晴らしい! |
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彫刻レリーフが素晴らしい建物は、それだけで芸術品 |
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この博物館でファッション関係の展覧会とは意外でした |
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外には面白い彫刻が |
展覧会の内容は、パリを支えた外国人クチュリエ。内戦を避けてパリに亡命したバレンシアガなど、政治的理由でパリに来たクチュリエを始め、ファッションの都を目指して、自ら日本を飛び出しパリを目指した高田賢三や三宅一生。ストリートファッション全盛期の時は、ヴィヴィアン・ウエストウッドなどのイギリス人デザイナーが奇抜なファッションでパリのモードに喝を入れる。最近では、経済と共に衰退しつつあったパリのモードに新しい息を吹き込んだ、アントワープ王立芸術アカデミー出身のベルギー人たちが記憶に新しい。
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バレンシアガをはじめとするスペイン人クチュリエの作品 |
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ずらりと並んだ素晴らしいドレスの数々 |
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ヴィヴィアン・ウエストウッド |
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アレキサンダー・マックイーン |
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ロメオ・ジリ |
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特許を取ったテキスタイルについての説明 |
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政治亡命者としての身分証明書 |
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刺繍のサンプル |
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エルメスのスキーウェア |
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発注に関する帳簿 |
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イタリアのニット技術は未だ健在 |
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ジバンシーなどによるドレスの数々 |
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まるでギリシア彫刻のようなドレスです |
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これだけのドレープをドレスに再現することを考えると気が遠くなります |
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靴デザイナー、サルキス・デラ・バリアンの作品 |
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デラ・バリアンに対するピエール・カルダンによる契約書 |
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ロベール・ドワノー撮影 |
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見ているだけで楽しいデザイン画 |
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三宅一生についての新聞記事 |
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三宅一生のボディタイツ |
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高田賢三のカラフルなフォークロア調ドレス |
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アントワープ王立芸術アカデミー出身のデザイナーたちによる作品 |
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ゴミ袋で出来たドレスとは言われるまで気づかない |
クチュールをこれまでと違う角度から見て、ファッションというきらびやかな裏には、デザイナー自身の苦悩が隠れていて、それを乗り越えても美しいものを作り出す彼らの精神に心打たれました。
かつては、デザイナーがいて、お針子さんがいて、そしてそれを生産するアトリエがあって…という本物の共同作業が存在していました。つまり、仕事そのものが「手づくり」というもので支えられていて、その世界は生活を共にして助け合う「コミュニティ」としても機能していただろうと思われます。今日はグローバル化と称しながら実は人件費削減という目的で、あらゆるものが自分の知らないところで低賃金労働者により生産されているという時代になってしまいました。そうやって時代の紐を解いてみると、その分人々が手を動かさなくなり(その手はIT機器に奪われてしまいました)ちょっと寂しい時代になったな、と感じます。
どこを見ても同じようなデザインの安い服ばかりが氾濫する今、このようなデザイナーのメッセージを担ったオートクチュールのドレスがどんどん姿を消していくのは本当に悲しいことですが、これも時代の流れの一つに過ぎないのかもしれません。
しかし、美しいものをただ美しいと感じる人間の心と、それを自分の手を使って作り出したい、という創作意欲というものはどんな時代になっても無くならないものだと私は信じています。