2009年3月15日日曜日

ありがとう

編み物を始めたきっかけって何ですか、と聞かれたら「気がついたらで編んでいました」としか言えません。小学校2年生ぐらいだったと思いますが、手元にあったのが何故かたまたまアフガン編みの棒で、それで人形か何かのお布団みたいなものを編んだ記憶があります。しかし、その記憶もかなりぼんやりとしていて、それが初めて編み物と触れた時だったかどうかも覚えていません。それぐらい編むことをはじめ手を動かすことは私にとって自然なことでした。でも、編み物を通して多くの人と交流しようとしたきっかけは何ですか、と聞かれたらちゃんと答えることができます。

7歳のときから幼なじみであり親友だった友達によく編み物を編んではあげていました。といっても、自分にとってはどれもこれも失敗作でただ手元においておきたくないからあげていただけの話なのですが、彼女はいつもすごく喜んでくれました。社会人になってもらった手紙(当時はメールなどありませんでした)には「中学校の時にもらったセーターもちゃんととってあるよ」と嬉しい言葉がしたためてあったのを覚えています。そんな彼女が5年前に帰らぬ人となりました。病気と闘う彼女のために何もしてあげられない私がただ一つできたことは、私の編んだ物を愛用してくれた彼女のためにセーターを編むことでした。一目一目「病気が治りますように」とつぶやきながら何かに取り付かれたように一心不乱に編んで1週間で仕上げました。この前も後もこんなに短期間でセーターを編み上げたことはありません。その編み上がったセーターを「手荷物」として機内に持ち込み、帰国して彼女のお母さんと弟を通して渡しました。彼女がセーターに腕を通せないくらい弱っているということなど知らずに。

その後、セーターも一緒に彼女と旅立ちました。手元には彼女のセーターの残り糸が数玉コロンと空しく残りました。今日は彼女が天に召されてちょうど5年。その後、あれから随分たくさんの物を編み数えきれない人との交流ができました。最初は悲しさをかき消すために編んでいましたが、次第に自然と編み物仲間が増えてそれが楽しさに変わり、信じられないくらいたくさんの人と編み物をはじめジャンルを超えた手作りを通してお知り合いになれることができました。手法はどうであれ、人の思いが素材を通して作品となる過程が大好きです。そしてその思いは作品を通して伝わるということを学びました。

最初は全くもってお粗末なサイトから始め(今でもですが)その後ブログとなり今日に至っています。これからも日々気づいた手作り情報を発信していきたいと思っているのでこれからもどうぞよろしくお願い申し上げます。彼女が私の手を握って最後に残した言葉「ありがとう」をこのブログを読んでくださる方みんなに感謝の気持ちを込めて送ります。

今日のリクエストは中学生のときに彼女とレコードが擦り切れるまで聞いたデュラン・デュランのアルバム Seven and the Ragged Tiger です。私はジョン・テーラー、そして彼女はサイモン・ルボンのファンでした。その中でもUnion of the snakeは二人で毎日のようにキャーキャー言いながら聴いていました。